『遺言』とは亡くなった方(被相続人)が今までに築き上げた、あるいは先祖代々守り通してきた財産を誰に、どのように引き継がせたいのか、その意思を表したものです。自分が居なくなった後に残された者たちが幸せに 暮らすことができるように、考えて考えて作る必要があります。
以下は相続になってから、遺言書があればよかったと痛感するケースです。
[1]子どもが居ないご夫婦の場合
夫(妻)が亡くなると、配偶者は被相続人の親や兄弟姉妹と遺産分割協議をしなくてはなりません。
[2]相続人ではない人に財産を渡したい場合
何もしないと、内縁の妻(夫)や介護をしてくれた相続人の配偶者、お世話になった方等に財産を残せません。
[3]法定相続分を超えた財産を相続させたい場合
中小企業の後継者候補に事業用財産を渡したくても、法定相続分を他の相続人から主張されてしまうことがあります。
[4]前妻・前夫との間に子どもがいる場合
同居している子どもに自宅を渡したくても、他の相続人から法定相続分を主張されてしまうことがあります。
[5]相続人に未成年者や被後見人がいる場合
遺言書が無い場合は、遺産分割協議を行わなければならないため、特別代理人や成年後見人を選任する必要があります。
『遺言書』の代表的なものとして、以下の3つがあげられます。それぞれメリットデメリットはありますが、公正証書遺言で作成をすると、その後の相続手続がスムーズにいきます。
[1]『公正証書遺言』
遺言者が口述した内容を公証人が公正証書として作成します。費用はかかりますが、形式に不備がなく、遺言の内容をすぐに実現できます。
[2]『自筆証書遺言』
全文を自筆で書き、日付と名前を入れて押印します。費用がかからずいつでも書くことができますが、家庭裁判所での検認が必要で、形式に不備があると無効になってしまいます。
[3]『秘密証書遺言』
内容は秘密にできますが、遺言書の存在自体は秘密にはできず、証人2人と共に公証人役場に行く必要があります。
遺言書を作成する際に気をつけておかなければいけないのが『遺留分』です。相続人(兄弟姉妹は除く)には最低でも法定相続分の2分の1の財産を受け取る権利があります。
遺言書に従って、不動産を自分の名義に変更した後に、他の相続人に遺留分を請求されてしまい、結局売却することになってしまった、ということもよくあります。
円満な相続のために、『付言』を書くことをお勧めします。財産を遺言書に書いた内容で分けることにした理由、今まで伝えようとして伝えられなかったこと、これからどうしてもらいたいかなど、財産だけでなく『想い』を残すことができます。想いを残すことにより、遺言書の内容を相続人が納得しやすくなることも多いです。
相続する人の事まで配慮した遺言書は、一朝一夕では作れません。また、形式に不備がなくても内容に不備があることもあるため、相続税や納税にも配慮した遺言書を作成するためには、専門家に相談なさることをお勧めします。